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江戸川岸からの夕日に魅せられて
木ノ内博道

 冬の間、江戸川の岸から東京方面にかかる夕日を眺めるのは至福の時間です。市川の無形の財産ではないでしょうか。
 大正中期から昭和の初めにかけて、里見公園には里見八景園という大きな遊園地がありました。その名称の由来ともなった八景のひとつが江戸川の岸からの夕日です。今回は里見公園から江戸川の岸を下って、市川関所跡までを歩いてみましょう。

「ダイヤモンド富士」(川瀬美子さん撮影)


里見公園にあった「里見八景園」
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 11月と2月の初旬には、夕暮れ時になると高価なカメラを持った老若男女が川岸を行き交います。それは、夕日が富士山にかかる“ダイヤモンド富士”を撮影するためです。お金のかからない趣味だからと皆さん口々に言うのですが、高価なカメラを見ているとそんなことはないと思います。
 富士山頂に太陽が沈むのをダイヤモンド富士、富士山の峰に落日がかかるのをコロコロ富士と言ったりして、皆さん撮影に余念がありません。最近はスカイツリーに落日がかかるのを撮るのが流行りのようです。また、江戸川のあるポイント(京成線の橋のあたり)から撮ると、ダイヤモンド富士とスカイツリーを一直線に撮ることが可能です。
 趣味が高じると月が富士山の山頂にかかるパール富士を撮る人もいます。暗い中での撮影ですから難しさは何倍にもなるでしょう。機会も多くはありません。
 歩いていると、冷たい川風を感じながらも全身に夕日を浴びてほんのりと温かくなります。夕日に染まって熱心に撮影をしている人に話しかけながらの散歩です。このダイヤモンド富士の写真は撮影していた若い女性からもらったものです。
 川岸から離れて、国府台の高台に立って東京を眺めていると、江戸時代の後期に流行った江戸の町の俯瞰図を思い出します。正面に富士山があって、町の配置から見ても、私は、これらの俯瞰図は国府台からのものではないかと信じてやまないのですが、誰もそう指摘した人はいません。
穏やかな川の流れを楽しみながら歩いて、関所跡に立って、昔は橋もなくさぞ不便だったろうと想いを馳せますが、あった橋が壊れたわけではなく、そもそも橋がないのですから不便は感じなかったのではないか、とものの本にありました。
 そうそう、夕暮れ時ではなく早朝にこの道を歩いたことがあります。真間川の水門あたりで、朝日を背中に受けて川面を見ると、光線の加減でなんと川のなかが透けて見えました。何匹かの大きな魚が回遊していて、なにか特別な能力を授かったような気がしました。
 散歩はいろいろな発見の連続です。
案内人:木ノ内博道(資料『里見公園新聞』)


江戸川岸の「市川関所跡」

「江戸一目図」英三雅画
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